父がよく通っていた小さなアットホームなちょっと年季の入ったスナック。
私も何度かついて行ったことがあって、そこでよく会っていた常連さんのカジさん。
鹿児島出身で、いろいろ訳があって1人でこっちに出てきたと聞いていた。
お店に寄れば必ずといっていいほどカジさんがいて
最初はただ顔を合わせるだけだったのに、いつの間にか隣に座ってお喋りするようになって。
父とも気が合ったのかふたりで楽しそうに飲んでいたのをよく覚えている。
カジさんの十八番は、長渕剛の「桜島」。
カラオケで必ず歌っていて、それがものすごーく上手で♪
お店の女の子もお客さんも思わず聞き入るくらいで。
その歌が始まるとお店の空気も少し変わる感じがして
私もカジさんの桜島の大ファンだった。
でもしばらく姿を見ないなと思っていたら、ママから「少し前に病気で亡くなったのよ」と知らされた。
ママがお見舞いに行った時、カジさんは「またお店に行きたいなぁ。また歌いたいな~」って言っていたらしい。
それを聞いた日、店にいた常連さんがふと「桜島」をリクエストして歌った。
カジさんほど上手じゃなかったけど、不思議とその声に引き込まれてしまった。
あの夜だけは、みんながちょっと静かにその歌を聞いていた気がする。
ママが父に水割りを作っていた時、もうひとつグラスをそっと置いていて、
父が笑いながら言った。
「カジさんは、またどこかで自慢げに歌って飲んでるよ」
ママも「きっとそうね」と笑って2人で乾杯していた。それ以上カジさんの事を
話す事もなく、いつもと変わらない時間を過ごしたあの夜。
夜の街は、ただ楽しいだけじゃない。
いろんな人生が交差して誰かの思い出がふと流れ込んでくるような
そんな不思議な場所だと私は思う。
父はいないけど、久しぶりにあのスナックに一人で行ってみようかな。
ママの顔が見たくなったなぁ・・。
今日も誰かの思い出と、新しい出会いに華をそえる
キャバクラ・ラウンジ・スナック・ガールズバー・コンカフェなど
様々なお店で頑張っている女の子にエールを送ります♪
2025年8月14日 大野